LOGINうーん、どうしてこうなった……? 祭典、夕暮れのお祭りの街中をみんなと歩いている俺は浴衣を着ている。いや、浴衣が悪い訳じゃないんよ。なぜピンクの女性用の浴衣もろもろのお祭りセットを着せられているのかということだ。そして仕方ないので勿論、女性体になっている。さすがに男性体の状態では違う意味で着れない。このお祭り堪能セットを用意していたのはやっぱりアリアだが、持って来たのはアヤだ。しかもノリノリで。みんなの分も頼んでいたらしい。「折角だから一緒に可愛い恰好をして、日本の夏祭りとか縁日みたいに過ごしたいなー」 などと目を輝かせて言うから、断れなかった。うーん、困った。着付けも髪の毛の飾り付けも全部アヤとウチのメイド組がやってくれた。もうこれまたノリノリで……。でもね、女性体の時の体を見られるのは何故かすんげー恥ずかしいんだよ。あー、いやマジ勘弁して欲しいけど、アヤがこういうシチュエーションも楽しみたいらしいので、もう今更だなあと逆らわないことにした。段々受け入れていってる自分がいるのは確かだが、アガシャに見られるのだけは一番キツかった。いやマジで。 バトル組の男性陣、エリックにアジーンは男性用の紺色やら暗めの配色の浴衣だ。城内で軽く飲み食いしながら待ってくれていた。って言うかそりゃ気まずいよ、それに俺も男性陣なんだけどね……。そしてユズリハにちょくちょく邪魔され悪戯された。クラーチでの悪夢を思い出すよね、これ……。言っとくけど、昔の日本の伝統みたいなことはしてないぞ。ちゃんと下も穿いてるからな。でも上は勘弁してください。 そしてお祭りセット一式をフル装備で城下に出て来たんだが、浴衣を着ている人が結構いることにも驚いたけど、夜店とか屋台とかも西洋のものと同じくらい日本ぽいのが結構あるんだよ。なんだろなあー、この世界は和洋折衷みたいな感じなんだよなあ。屋台には焼きそばとかたこ焼き、りんご飴、お面とか射的(コルク銃ではなくおもちゃの弓だが)、千本つりみたいなくじ引き(これはまず当たらないからやらない方がいいとみんなには言っておいた)、まあ千里眼や鑑定で視えるしね。うん、でも何だか懐かしい気分になる。 浴衣を初めて着るイヴァやルティは子供の様にはしゃいでいた。アガシャも初めて着たらしいが、少し照れ臭そうだったので、「可愛いし似合ってるぞ」と
準備を済ませた二人、黒が基調の龍人族の着物のチェトレと暗殺者のジョブらしく、黒一色のローブに動き易いボディスーツの様な装備、口元もマスクで表情が見えないが、短めの金髪のタマユラが舞台の中央に立つ。鑑定に千里眼、ローブの内側には隠してある武器や暗器で一杯だ。さすが暗殺者のジョブだな。実際に人を殺してる訳じゃないだろうけど。そういう特性のジョブだ。 これは気を付けないと不意打ちを喰らう可能性が高いな。真っ向からやり合うタイプじゃない。俺としてはトリッキーな攻撃方法は使えるかも知れないから見てみたいが、チェトレがまともに闘えるかだ。真っ向から突撃しても確実に回避されて間合いを保たれるだろう。レベル的に掴まれたら龍帝拳の餌食だからな。そしてさっきの試合で無駄にアジーンが龍帝拳を見せびらかせてしまった。気を付けないと危ないだろうな、チェトレは。アジーン同様に泥試合をさせる訳にもいかない、ちょっとアンフェアかも知れないが、念話でサポートするくらいならいいだろう。『では第五戦、始め!!!』 マリーさんの開始の合図で一礼をした両者。チェトレはその場から動かないが、やはりタマユラは距離を取った。「これでこちらの五連勝にさせて貰うわ」「フッ、今迄の様にはいかんぞ」 距離を保ったまま舞台の上をチェトレを中心に回転する様に走り始めるタマユラ。ダッシュと縮地を組み合わせた歩法か、陽動だろうが中々の速度だな。「じゃあ、初代様直伝の戦術を見せてあげる」 両腕を組んで、仁王立ちの姿勢をするチェトレ。ほう、龍掌底波の構えか。あいつはアレを使えるのか? だがあの構えはかなり挑発にはなる。悪くはないな。「腕を組むとは……、舐めている様だな。喰らえ! 暗殺者武技・シャドウ・ナイヴズ!!!」 シュババババッ!!! 背後の死角から闇属性の魔力を込めた短剣やナイフの投擲か、だがチェトレは魔力鎧装に心眼、未来視、明鏡止水も全て発動させている。ちゃんと死角からの攻撃に備えていたな。 パパパパーァン!! ピシィ!! しっかりと方向も把握し、振り向きながら魔力の籠った掌底でナイフを叩き落とし、一番大きな短剣を人差し指と中指で白刃取りの様に止めた。うんうん、冷静だな。「チッ、全て防がれるとは……!」「お返
さて、インターバルも終わった。次は誰の出番かな?『えーでは次の対戦、第四試合は…リチェスターBランク、アジーン・バハムル選手とアレキサンドリア連合王国西の国スクラから、Sランクの上級格闘拳士のゴリゴリオ・キューティ選手の対戦です! 準備を済ませたら、舞台へ上がって下さい!』「よっしゃー! 兄貴、いってきます!」「おう、気合入れていってこいよーアジーン」 兄貴呼びはやめてくれねえ。しかし、引っ掛かるのが相手の名前のセンスだ。いや、見た目も筋骨隆々でムキムキマッスルの髭のオッサン。しかもピンクのフリフリなゴスロリドレスを着ているし、すね毛がボーボーでぶっちゃけ直視するのもビジュアル的にキツイ。黒くて長い髭も三つ編みだし、同色の髪の毛も三つ編みで長いツインテ―ルだ。しかもデカい、2m以上はある巨体だ。「なんか相手の名前変じゃね?」 ディードにそれとなく聞いてみる。「ああ、あの方は元々クラーチで冒険者をしていたのですが、修行の旅に出ると言って他国へ行ってしまったんですよ。今はこの国にいたんですね」 ああ…、そうか、そうだろうね……。「やっぱ名前からしてそんな気がしてた……」『アリアさん、何でもアジーン選手はあの次代の竜王候補と言われる程の逸材らしいですね? そして龍拳闘士と言うからには格闘技に魔法という龍人族ならではのスタイルなのでしょうか? そして相手のゴリゴリオ選手も似た様な格闘術で闘うということでいいんですかね?』『ハイハーイ! みなさんお待たー?! 解説のアリアお姉ちゃんですよー! そうですねー、マリーさんの言う通りですねー。龍人族は世界の秩序を守る観測者として長くそのスタイルを磨いてきました。ウチのアジーンとチェトレの二人が次代の竜王ですよー。でもまだまだ粗削りなところもありますね。そしてアジーンのレベルが1770に対して、ゴリマッスルさん? は1480ですかー。これは中々拮抗したバトルになりそうですねー。アジーンは稽古でも毎回剣士のエリックにマジウケするほどボコられてますからねー。まだまだこれからの伸びしろに期待ということですかねー?』 あのアホは味方なのか? しかも相手のことディスり過ぎだろ。「「「ゴーリゴリ!!! ゴーリゴリ!!!」」」 おおぅ、さすが地元だけあってゴリさんに声
イヴァと対戦相手のSランク、暗黒騎士のサウロンが一礼をしてから距離を取る。暗黒騎士ねー、まるでFF4の主人公の初期ジョブだな。フルフェイスのヘルムを被った長身。全身を黒づくめの鎧で覆っている。うーん、重そうだ。ウチの連中の装備はアリアが創ったかなり軽い服だからな。暑い季節や地方だとしんどそうにしか見えない。鑑定、レベル1180か、イヴァの半分くらいだな。あのダメージ肩代わりの魔道具はアリアが創ったものだし、普通にやり合っても問題ないだろうな。「Bランクであっても容赦はしない。それに剣聖の称号を持つ者と闘えるなど…。本気でいかせてもらうぞ!」 おお、結構まともな人っぽい発言だな。さてイヴァはどうするんだろうか?「じゃあ本気でいくのさ。リミット・ブレイク!!! ビースト・モード!!!」 ドゴオオオオッ!!! おおい……、いきなりぶちかますんかい!『おおっと、イヴァリース選手の髪の色が銀色に変わって闘気が全身から溢れ出しました! 解説のアリアさん、あれは一体何なのでしょうか?!』『あれは自己のリミッターを外し、防御耐性を下げる代わりに大幅に攻撃能力が増すという、ウチのニャンコちゃんの戦闘モードですねー。うーん、一撃で終わりそうですねー、これはー。あの黒づくめの厨二さんには悪いですけどー(笑)』 アリア、ニャンコ呼びは止めてやれよ。それに確かにそうだけど、相手を馬鹿にしすぎだろ……。「いくぞ、鳴けアロンダイト! 暗黒剣武技! ダーク・エアスラッシュ!」 ザシュシュッ!!! 右肩の上に両手で構えたアロンダイトを一瞬で3回振るった。黒い衝撃波がイヴァへと放たれる。「聖剣技・白龍天衝」 パパパァーン!!! ドゴオオオ――!!! イヴァが抜刀術の構えから放ったのは白く輝く龍の姿をした剣閃。それがサウロンの武技を軽々と、まるで虫を払うかの様に消し去り、そのままサウロンへと直撃した。「がはあああああッ!!!」 バキィイイイン!!! サウロンの黒い鎧が砕け散り、彼の『ダメージ肩代わり君』が粉々になった。あーあ、やっぱこうなったか……。しかもリミット・ブレイクにビースト・モードまで使いやがった。加減しろよな……。 ダアンッ!! そのまま仰向けに倒れたサウロン。兜も砕
アヤ達Bランク組と、俺とエリユズの対Sランク同士の興行試合の日になった。結局ギルドでわざと大暴れしたのと、アヤ達のレベルがSランク以上という問題もあり、Aランク相手との昇格試験は無意味だということになって、一気にSランク相手の昇格試験を兼ねた、前代未聞の、こちらもある意味興行試合となった。 昨日マリーさんがわざわざ城まで伝えに来てくれたのだ。何でもステファンがかなりイキって、他国のギルマス達を黙らせたらしい。あのときもかなり煽ってたしなあ。まあレベル差から考えてAランクとやるとデコピン一発で終わるし、神格持ちとでは勝負にすらならない。ずっと人外を相手にしてきたせいで、こういう普通の人族の基準に当てはめると規格外になるのは目に見えているんだけどね。これはこれで困ったもんだが、仕方ない。でもSランクになっとけばギルドの仕事は報酬が良いものを選びたい放題だし、人として暮らしている以上、お金はたくさん稼げるに越したことはないしね。 お祭りは昼過ぎからだが、城下は朝からかなり盛り上がっている。俺達は準備ができ次第お城の使いの人達が迎えに来てくれるらしいので、相変わらず俺の部屋が溜まり場になっている。適当に食事も済ませたし、まったりとみんなでお菓子をつまみながらお喋りタイムだ。そして何故か今朝からアリアを見かけない。何か変なことやってそうで不穏だ。嫌な予感しかしない。「なあ、アリアはどこ行ったんだ? あいつは放って置くと碌なことしかしないからな……」「うーん、今日は大事な用事があるって朝から出かけたみたいだよ。何かサプライズがあるとか言ってたけど。何なんだろうね?」 アヤは朝出会ったのか。サプライズね…嫌な予感しかない。「あいつはギルド登録してる訳じゃないからなあ。どこで何してようが構わんのだが、サプライズとか言ってる時点でもう何か変なことを企んでるとしか思えないよな……」「まあアリアさんだからねえー」「何かおもろいことやってるんじゃないのか?」 エリユズは慣れたもんだな。いいんだろうかこれで?「アリア様はいつもマイペースですよね」「良い意味で奔放ですよね、アリア様は」 ディードにアガシャ、そりゃまあいい加減慣れるよな……、一緒に生活してるんだし。それにティミスと比べたらマシに決まっているけどな。「アリア様って神様なのに面白いよねー。この前不思議な
さてさて、クラーチでの祝賀会も終わった。俺達は翌日、各国に設置してある転移門を使って、アレキサンドリア連合王国の南西から東北に伸びる三つの国、スクラ・グラード・エレシスと言う国家の中心都市、首都グラードへと移動した。うーん、便利だ。しかも結構デカいから大人数で一気に移動できる。 これはアレだな、ドラクエで言うところの旅の扉とか泉とかそういうやつだ。どういう原理なのかさっぱりわからん。でも絶対に神・アリアが干渉してる代物だろうな……。空間魔法の応用とかで創ったんだろう。俺達の拠点の中立都市にはないらしい。ある程度人口が多い大国にしかないんだとさ。まあリチェスターにあったら残念王やら義兄姉がしょっちゅう来るだろうしな……。俺らには転移魔法もあるし、別に問題はなくていい。その内設置されそうな気がするけどね。俺らがいるからさ……。 しかし結構大所帯になって来たもんだ。サーシャとルクスが戻ってきたら、エリユズはまた修行に駆り出されるだろうけど。今回は何と言うか、久しぶりに人として昇格試験や興行試合に参加するんだが、もう俺達のPTのレベルは人類のそれじゃない。興行試合で相手がSランクとはいえ、思いっきり手加減しないと簡単に殺してしまう。あっさり勝っても、世界中が注目するイベントらしいから盛り上げないといけないのかなあとか考えると、面倒臭くて頭が痛い。だからと言って神の流派を使うなんて以ての外だしな。相手が粉々になる。 祝宴のときのガノンみたいなのがエリユズと当たると、スプラッタになりそうで怖い。まあ他のSランクの人達はまともそうだったし、適度に盛り上げて武器破壊か峰打ちが無難だろうな。でも他のSランクの戦術を見てみたいのもある。今後の参考になる点があるかもだしね。 転移門を抜けて、アレキサンドリア連合王国、首都グラードの王城内に出る。クラーチ王国とはまた違って荘厳かつ豪華な造りだ。大会に試験は3日後。他国の王族も見に来るらしいし、後でギルドにも顔を出しておくか。期間中はこの王城に寝泊まりしていいらしいから、クラーチのお城で生活してたときみたいなもんだな。 適当に充てがって貰った豪華な個人部屋でベッドにゴロリ。このまま惰眠を貪りたいが、俺の部屋には間違いなくみんなが溜まり場の様に集まって来るんだよなあ。 ドンドンドン!!! ほらね……もう来たよ。気配からして







